杉山 正 Brass Camp 2013体験レポート

〜 すべての金管楽器奏者と金管楽器指導者のための 〜

new_anime.gif

Masashi Sugiyama Brass Camp 2013 体験レポート

by 高橋律也(注釈以外)

P1000921.JPG7/13~15の三連休に行われたMasashi Sugiyama Brass Campに今年も参加してきました。
これは杉山正主催のTpからTubaまですべての金管奏者を対象とした2泊3日のワークショップで、5回目となる今年も全国から集まったたくさんの受講者の皆様、超一流の講師陣と三日間寝食を共にし、朝から晩までブラス三昧でした!!

僕は中一でTpを始めてからずっと杉山先生のご指導のもと精進していますが、それでも毎年大きな気付きがあり、いつも驚いています。
何度も教えていただいていることでも、自分の解釈や理解の方向性、他の受講者の方の音や演奏や受け取り方、他の講義との連動や多面的な理解によって、明らかにこのブラスキャンプに参加しないと得られない成果をいつも感じています。

更にはリピーターの方々の毎年の成長と、毎年違う切り口から金管演奏の真実について解き明かして下さる講師陣の皆様、そしてそれを円滑に進めて下さる運営スタッフ陣によって、キャンプ自体のブラッシュアップ以上に、自分自身のブラスキャンプ参加者としての能力が向上している様に思えます。
これはきっと金管演奏を理解し、実践する能力を強めてくれるものだと思っています。

※まだ参加した事のない方のために!!※

以下に(今年の)キャンプの概要をまとめてみたいと思います。
金管プレーヤーの方は興味のある方もない方も、是非読んでみて下さい。
なるべくわかりやすく、一般的に書いてみますので、本筋とずれる表記があるかもしれませんが、ご容赦下さい。間違っているところ、足りていないところはつっこんでいただけると助かります!

杉山正による奏法講座

382547_509123052494743_1035223815_n.jpgアーイーと言った時の舌の動きの観察・このキャンプは偉大なTp奏者であり、金管指導者であったClaude Gordonが生前開催していたClaude Gordon Brass Campを、その直弟子であり、日本人で唯一のオフィシャルスタッフであった杉山正が日本で復活させようと始まった。
・100年前に”普通”であった奏法や金管演奏による理解が、今日では失われており、日本だけでなく世界的におかしな奏法や金管演奏への理解がなされている。
・H.L.Clarkからその弟子のClaude Gordon、そして杉山正へと伝わってきたその奏法を、二泊三日のワークショップでレクチャーし、他の講義と連動させることで、奏法そのものに凝り固まるのではなく、”普通”の金管演奏を実感・実践していく。
・タング(舌)やエアパワー・エアコントロール(呼吸法)、エクイプメント(楽器・マウスピース)の役割と重要性、教則本の正しい使い方・意図、唇についての誤解、等々を簡潔に明確にしていく。
・金管演奏はタング(シラブル)の変化によって、音が変わる。

(注釈)1日の練習はフレキシビリティからスタートする。フレキシビリティが伴っていないと音が響かない、耐久力不足、音楽表現がうまく行かないなど悪影響がある。各エクササイズごとに楽器を口から離して唇の血流をもとに戻すこと。(動画はFlex Tongue Build3番)ー2日目の奏法講座よりー


・それらの正しい金管演奏に関する情報を実感し、実践することで、ダブルペダル音域からダブルハイ音域まで5オクターブをゴージャスで豊かなサウンドで演奏出来るようになる。これは中低音のサウンドが良くなる、バテなくなる等の実際の演奏において有益な事柄も同時に達成する。

(注釈その2)High Air Build5番のデモ(動画)を聞きながら全員でローレンジスタディとハイレンジスタディに挑戦。ペダルは耳の訓練にもなる。ー2日目の奏法講座よりペダルトーンー


(注釈その3)動画はダブルペダルC。顎を柔らかく使うこと。−最終日の奏法講座よりHigh Air Build7番ー


1016258_509503635790018_1311424001_n.jpgスタッフが首から下げているのはゴードンが実際にテーチングで使用したもの・息(エア)は肺に入るのであって、お腹には入らない。演奏に繋げるためには呼吸筋の発達が必要。ビッグブレス・チェストアップ。
・楽器やマウスピースは、タイトで奏者の発達を阻害するものと、オープンで奏者の発達を邪魔しないものの二種類しかない。今日、一般的とされるもののほとんどが前者である。特にTpに顕著。
・100年前に書かれた優れた教則本が今日まで残っているのにも関わらず、現本に解説がなかったり、出版社による悪い改訂によって、その真意が伝わっていない。
・金管演奏において唇は勝手に振動するだけで、音程を変えたり、サウンドを改善したり、耐久力を司るものではない。

1001011_509123172494731_96109159_n.jpg1005996_509173442489704_1189972087_n.jpgこれらの内容を100年前の音源資料、先生と参加者全員によるデモンストレーションで実感していきました。
上記の様に文章としてまとめると、膨大な量で少しキツイ言葉に見えるかもしれませんが、実際にレクチャーを受けると自然で単純な理解を求められていることが良くわかります。
タングやエアに意識を働かせるだけで、初心者もベテランも劇的にサウンドが変化しました。誰もが一目瞭然の結果になっていました。

福田員茂による呼吸解説講座

993599_509123242494724_1751827201_n.jpg動画を見せながら横隔膜が薄い膜だということを解説した
・内科医であり、Tp奏者である福田先生による金管演奏における呼吸の解説。医学的見地からの呼吸法の解説とプレーヤーレベルでの演奏との関わりをレクチャーしました。
・Claude Gordon著の『金管演奏の原理』に書かれているラリー・ミラーによる呼吸に関する学術論文を紹介、解説。
・一般に言われる腹式呼吸や横隔膜を下げろということは妥当ではない。横隔膜は非常に薄い組織であり、それ単独では動かすことの出来ない組織である。また、横隔膜はドーム状から平たい状態にはなるが、下方向に下がることはない。
・金管プレーヤーをX線透視し、演奏した時(音を出した、息を吐いた時)、肺の収縮と共に呼吸筋・呼吸補助筋に収縮(働き)が見られた。
・呼吸筋は筋肉群として働くものであり、腹筋や胸筋、背筋など単体で働くものではない。そのため呼吸のために腹筋運動をしたり、特定の筋トレをすることは無意味。
・演奏に必要な呼吸筋を発達させるためには、医学的にみてもClaude Gordonの推奨したブリージングエクササイズが最適である。(チェストアップして、肺に空気が入るのをイメージして、大きく深呼吸の様にする、吐くときも胸や肩は下げない。)
992900_509173725823009_521105282_n.jpg・スパイロメーターという実際に医学現場で使用される測定装置を用いて、参加者の肺活量、努力肺活量、一秒量を測り、ブリージングエクササイズ実施状況やスポーツ経験、演奏キャリアなどと呼吸機能との関連を考察した。
・一部喫煙者の方を除き、概ね良好な(呼吸機能の高い)検査結果が得られた。
・あくまでも呼吸機能はエアパワーについてであり、演奏との関連を図るにはエアコントロールの訓練が必要である。しかし、パワーのないところではコントロールも出来ない。

松崎祐一によるクラシック講座・アンサンブル講座

DSCN0158.JPG・広島交響楽団の1stTp奏者であり、杉山正のもとでCG奏法にも精通した松崎祐一による、クラシック解説講座、クラシックアンサンブル講座。
・移調読みの仕方、年代別による曲の解釈について(リズムや音の長さ等)の解説。
・有志の受講者が、与えられた課題曲を審査員(講師陣)の前でオーディション形式で演奏する、オーディション体験。皆様始まるまでとても緊張してますが、終わったあとは良い経験だったと大満足。
・業界のオーディションの現状の紹介、テープ音源審査のお話しなども。
・松崎先生による素晴らしいデモンストレーションの数々が何よりも受講者の身になっている?(と私は思います。)

1003692_509173995822982_1726551073_n.jpg

堂本雅樹によるジャズ・インプロヴィゼーション講座

DSCN0224.JPG・BTb奏者、Tuba奏者として第一線で大活躍なされている堂本先生によるインプロヴィゼーション(アドリブ)講座。
・今回は受講者参加型ということで、理屈や方法論よりもまずやってみようというスタンスでした。結果的にジャズ未経験の方も良いソロを取っていました!
・Fブルースを題材に、ブルーススケールから指定された音を使って、受講者全員でアドリブを取る。
・初めはFだけ、次はFとG、次はF・G・Ebという様に縛りをつけてインプロヴィゼーションしていきました。
・Jazz未経験者にとっても、経験者にとっても、非常に楽しく音楽に向き合えた時間でした。それぞれの音を聞きあって、ソロの内容もどんどん良くなって行きました。
・Jazzはわからない、難しいと思っていたはずの方も、簡単に吹けていたのが印象的でした。堂本先生のソロがほんとに素晴らしかった!

内田日富によるジャズ(ブラス)アンサンブル講座

1005983_581979991852886_2094226047_n.jpg・Tb奏者として長年第一線で活躍し、杉山正の高校の同級生でもある内田先生によるジャズアンサンブル、ブラスアンサンブル講座。
・ビッグバンドではSammy Nesticoの曲を題材にして、非常にわかりやすい(この表現がぴったりなんです)アンサンブルの作り方を指導していただきました。
・受講者の方が順番にステージに立ち、曲の細部にわたってアンサンブルクリーニングのレクチャーを受けました。
・同じ音符でも、前後の流れや音形によって変わるアクセントやニュアンス、強弱などをまず全体で決めてから吹くだけで、縦の動きだけでなく、サウンドまでもハモってしまうことに参加者全員驚きました。
・言葉では伝わりづらいニュアンスについても、内田先生の実演によって、参加者の皆さんはすぐに理解することが出来ていました。
・参加者のほとんどは初見だったのですが、内田先生の雰囲気作りもあって、みなさん臆せずにチャレンジしていました。最後には初見とは思えないほどにゴージャスなサウンドに!
・ブラスアンサンブルでは今回のキャンプのために書かれた編曲(MJやJackson5)を題材に、ビッグバンドジャズとはまた違った解釈でディレクションしていただきました。

深谷政巳による楽器ケア講座

63601_509503575790024_2146786438_n.jpg・金管リペアマンとして言わずと知れた深谷政巳による楽器ケア講座。
・日常的な楽器のメンテナンスケアについての解説、ピストン・スライド・ロータリー楽器に至るまで。漬け置き洗いなど初めて知った方も多いのでは。
・メッキとラッカーの違い、真鍮やニッケルなど楽器の素材についての解説とその取り扱いについて。
・マウスピースを縦半分に真っ二つにした見本を使い、スロート、バックボアなど普段目に見えない部分についての解説。
・楽器の改造についてのマニアックな内容に至るまで、限られた時間の中で濃い楽器話をきかせていただきました。
・毎年講義以外の時間にも参加者の楽器修理・メンテナンスをしてくださったり、マニアックな楽器トークを披露してくださっています。


起床は7時、朝食前に広場に集まり全員でのブリージングエクササイズでキャンプの一日は始まります。
今年は二日目の朝にキャンプリーダーの梅沢伸之によるマーチング体験も行われました。
また、ビュッフェ形式の豪華な食事の時間は参加者同士のコミュニケーションの場でもあり、ある人は楽器談義に花を咲かせ、ある人は自分の好きな音楽の話、ある人は講師の方々に色々な質問をしたりと有意義な時間を過ごします。
また、自由時間には自主的に持ち合ったアンサンブルの譜面を即席メンバーで練習する風景も、キャンプの代名詞となっています。
22時過ぎまで組まれた講座が終了するまで、文字通り朝から晩まで楽器漬けの三日間です。

ざっと書き出してみましたが、いかに充実したキャンプであるか伝わりましたでしょうか?
僕は今年もサブスタッフとして参加させていただき、準備段階から関らせていただきました。
毎年より良いキャンプにしようとスタッフ・講師陣の真剣な姿勢と、毎年それ以上に期待に応えてくる受講者の皆様の姿勢。
今後何十年と続くキャンプになるように、微力ながらスタッフとしても、参加者としても尽力していこうと強く思っています。

何よりもこのキャンプでしか得られないものを実感してしまったので、これはもうやめられません!
金管演奏について、独学や思い込み、間違った教えによって何年もつまづいている問題が、たった三日間で改善されます。
セールストークの様になってしまいますが、杉山先生の言葉をお借りして「正しいことを言っているのだから」、これからこのキャンプをもっともっと大きくしていく努力をしようと思います。


※そして、今年参加されたすべての皆様、お疲れ様でした!!※

楽しい、素晴らしいキャンプを今年もありがとうございました!!

今年、リピーターの方でお仕事や様々な事情で参加出来ない方がいらっしゃいました。
そんな方々の行きたかったぁーーー!!という声をFB上でもたくさんお見かけしました。

是非来年の三日間は一緒に過ごしましょう!!

今年参加した方も、以前参加した方も、一回ではなく何度も参加することで見えてくることがたくさんあります。
不思議なことに、基本は同じ内容のはずなのに、毎年得るものがあるだけでなく、得るものが毎年増えていることに気づきました。

参加経験者の方々のお力もお借りして、キャンプをより良いものにしていきたいと強く思っています。
多少押し付けがましくなってしまうかもしれませんが、キャンプで見せてくれた様に、それぞれが立派なブラスプレーヤーであり、楽器と音楽が大好きな皆様と一緒にキャンプを支えていけたらと思っています。

これはスタッフとしてではなく、一人の参加者としての気持ちです。

それぞれが目的と希望を持って毎年のキャンプに望んでいると思います。
確かに受講生・参加者という立場ではありますが、今回の参加型の講義で実感した通り、受動的な参加者より能動的な参加者になった方が楽しいし、理解できるし、上達するし、良い事づくめです。

来年のキャンプまで、もうそれぞれが自分の課題と向き合って精進していっていると思います。
少しだけ来年のキャンプに、今から参加している気持ちになっていてくれたら、僕は嬉しいです。

たくさんの方に参加していただいたら、それだけ自分自身の受ける刺激や影響も大きいですからね!!
是非自分の周りのブラスプレーヤーは全員ゴードンの正しい奏法!!だから自分の参加しているバンドのサウンドはゴージャスでファットで、美しくて超イイ!!っていうのを目指しましょう笑

だいぶ長くなってしまいました。最後まで読んでいただきありがとうございましたm(__)m

いつやるの!? NOW!!

BrassCamp2013(0328).jpg