杉山 正 - 金管演奏の原理の紹介、考察

The Brass Connection

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Masashi Sugiyama

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更新日 2008-11-16 | 作成日 2008-05-14

金管演奏の原理 ー 考察

金管演奏の原理.JPG 
■金管演奏の原理 — クラウド・ゴードンによる自然科学的解明
 
□■「金管演奏の原理」の考察・研究■□ 
 
この本が出来上がった背景や限られた紙面の中では語りきれなかった事柄などにもスポットを当てていきます。
 

 

プロローグ

 
Gordonの晩年、弟子達の間ではGordonが今まで語らなかった奏法の秘密を本にして残すことになったらしい・・という噂がまことしやかに流れていました。
そして「BRASS PLAYING IS NO HARDER THAN DEEP BREATHING」が出版され、ある人は「すべてを語っている」と言い、ある人は「いや、そんなことはない」と両極端の反応がありました。私は前者ですが、この本を手にした時「秘密」というものではなく、彼がいつもレッスンやレクチャーで語っていたことを分かりやすくまとめた本だな、という印象でした。
この「分かりやすく」という感覚は私がGordonから直接レッスンを受けていたからこそのもので、実際レッスンを受けていない人が読んだら理解しにくい箇所があるのではないかという懸念がありました。
そのためこの本を翻訳するにあたって、始め説明を入れながら訳していったのですが、専門家からは「そのようにしてしまうと翻訳ではなくなる」 と指摘を受け、結果Gordonの言葉そのものの訳本となった経緯があります。
H.L.Clarkeの頃からGordonが受け継いだ奏法をトランペットプレーヤーだけでなく多くの金管プレーヤーに知っていただければと思っています。
 
2005年10月18日
 
 
 
 
 
 

考察その1
 
 
 

この本のP7〜P11に書かれている文章をきちんと理解することが出きれば、あとに書かれているものがGordonと同じ目線で正確にキャッチできます。このページは100年程前の金管プレーヤー達が現在に比べてどれほど優れていたかにもかかわらず、現代に継承されず、途中で途切れてしまっているのは何故だろうか、と言うGordonの問いかけから始まります。
いったいどれだけ優れていたかは、実際に音を聞かなければ実感できませんが、幸いなことにエジソンが発明した蓄音機のおかげで、当時の録音が残っています。Gordonのワークショップでは彼らの演奏を聴くレクチャーがあり、当時録音に使用された楽器もGordonが所有していたため実際に見ることが出来ました。現在これらのコレクションは、イリノイ大学のライブラリーに展示されています。
昔の録音のためサウンドが不鮮明な部分もあるので、Gordonに生の音はどうだったのか、と質問したところ、「すべてのプレーヤーがゴージャスなビッグサウンド。マイク無しでカーネーギーホールのすべての空間がそのサウンドで埋め尽くされた」と話していました。
兄弟弟子のJeff Purtleのサイトでのサウンドファイルを是非チェックしてみてください。Liberati,Swiftなどヴァーチュオーソ達の演奏が聴けます。Gordonがどのレベルでものを言っているのか、理解できると思います。ちなみに私はSwiftの演奏が大好きです。聴いたら凄すぎて必ずや大笑いしてしまうでしょう。
演奏を聴く(Histric Recordings) [ch0]LinkIcon 
 
 
2005年10月22日
 
 
 
 
 

考察2ー教則本とその重要性p11〜p14ー

ここでは100年ほど前の素晴らしい教則本が紹介されていますが、それに対しての練習の仕方(How to practice、What to practice, When to practice))が欠落していると問題提起をしています。
エクササイズとして楽譜は残っていますが、やり方に関しては最小限に記されているため、これらの教則本を購入した人達は独自な解釈で練習したり、また教えたりしている可能性が大いにあります。また改訂を重ねる度に、注釈までもが改訂者によって書き換えられてしまう、というおぞましい事実も存在しています。
例えばCLARKEの「Technical Studies」に関してはFIRST STUDY〜NINTH STUDYのすべての注釈が変えられてしまっています。「NINTH STUDY」の始めに書かれているべき注釈 "No strain is necessary if played properly"(正しく演奏されるならば、どんな緊張・力みも必要でない)の言葉をもってこの教則本が完結しているにもかかわらず・・・これこそクラークが一番言いたかったことなのですが、改訂版はこの部分が削除されてしまっています。正しく演奏が出来ているならば、例えばEX.184なども4回リピートも楽にできるということで、Gordon自身、この本のこの箇所に下線が引いていたことも特筆したいと思います。
以上を考えただけでも古の偉大なプレーヤー達の奏法が、正しく継承されていない事が理解できると思います。また、文章が本人のものだとしてもそれを正確に伝える難しさがあります。例えば、クラークの「Setting Up Drill」の中でmpの位置は唇に対して上1/2、下1/2が正しいと書いてありますが、実際にGordonがクラークの演奏を見たかぎり、上2/3、下1/3だったそうです。
私がGordonからレッスンを受けて感じたことは、書かれていない様々な練習パターンやバリエーションが存在していること。クラークの「Technical Studies」の指使いなどは細かく指定がありました。
このようなことも含めて、これらの幾つかの教則本の著者に直接的な指導を受けられた最後の世代と思われるGordonからのミッションを正確に伝えていければと思います。
誤解のないようにしたいのですが、Gordon奏法、Gordonシステム等というものは存在せず、クラークの時代から継承された正しく自然な奏法をGordonが分かりやすく系統立てたものだと考えて欲しいのです。
 
2005年11月1日
 
 
 
 
 

考察3<金管楽器演奏に関する不可解な現象はますます大きくなるp14〜p16>

 
 
ここの部分はこの本の真骨頂で、特に重要な部分です。とにかくガッチリ読んで受け入れることをお薦めします。
このGordonが憂いていた当時のアメリカのブラスシーンは、まさに今の日本のブラスシーンに当てはまる感があります。
 
2005年11月25日
 
 
 
 
 

考察4<有害な態度p17〜p22>その1ハイノートの弊害

 
Gordonはp18の3行目から12行目で、間違っていたり、過度なハイノートについての警鐘を鳴らしています。これに関しては自分もまさにそうであったので、特にこの部分はグサっときます。
私は大学時代ビッグバンドをやっていましたが、ハイノートが苦手でコンプレックスさえありました。その反動で当時ビル・チェイス、メイナード・ファーガソン、キャット・アンダーソン等が相次いで来日したことも手伝い極端な高音崇拝が始まりました。練習はというと曲などはそっちのけで、ただただハイノート目指して極端な練習をしていました。その時巡り合ったのが、Gordonの"SYSTEMATIC APPROACH"でしたが、皆さんもご存知のようにこれはハイノートとペダルだけの教則本です。これだけの練習をしていた私は例外に漏れずどんどん吹けなくなっていきました。一般的にこの他にも演奏において悪い習慣がみについてしまう、健康を害する、そしてついに楽器をやめてしまう、ということが現実にあります。
私は最終的にGordonのところに行ったわけですが、そこではハイノートの練習は全体の何十分の1で、クラークをはじめ、セイントジャコム、アーバンなどの教則本を練習させられた私は「これでは日本の音大と変わりない」と非常にがっかりしました。しかし練習を重ねて行くとこれらの練習が自然にハイノートに結びつくのだと分かってきました。と同時に前の考察にも通じますが、教則本をきちんと理解し、使用する重要さも学びました。
クラークのエレメンタリースタディは初心者の為の教則本ですが、最終ページにはトランペットの音域としてペダル音域からダブルハイCまで記されています。これをとっても、ハイノートは決して特殊な音域ではなく正しく練習さえすれば誰もが得られるものだと考えることが出来ると思います。
 
またハイノートはピーピーというような細いサウンドではなく、中音域と同じような響きのある音楽的なサウンドであるべきだとも考えます。それには一見遠回りに見えますが、様々な教則本をバランス良く練習していくことが魅力あるハイノートに繋がっていくと信じています。
 
そう言えばGordonが面白いことを言っていました。「ラッパ吹きは実におバカで、ハイノートが出るMP、ハイノートが出るTp、ハイノートが出る教則本、ハイノートが出るベルト、ハイノートが出るリップクリーム、ハイノートが出る唇のマッサージなどなどなど・・・・・、ハイノートとつけば何でも買ってしまう」
昔の自分を言われているようです(苦笑)
 
2005年12月4日
 
 
 

有害な態度その2<有害なレッスン>

 
p21〜p22ではGordonはレッスンについて語っています。
彼はいつもグレートなプレイヤー達と話をしてみると、「彼らが自分のプレイについてどう上手く吹けているのか分析できていない事に驚く」と話していました。実際そのような人達にレッスンを受けてみると、それぞれ自分の独特なフィーリングで教えてはいるが、基礎が大事だと言ってロングトーンばかりやらされたり、ジョギング、水泳、腹筋、腕立て伏せetcをやるよう言われたり、教則本を勝手な解釈で指導したりする、と良く嘆いていました。また楽器がどのようにしたら機能するかという理論が欠如しているとも言っていました。
このようなレッスンを受けていても「道端の石ころをヒョイと拾うように、ほんの一握りの人は上手くなっていくので、真理が見えにくくなってしまうのだが、一般的にはほとんどのプレーヤーは正しいレッスンを受けなければ上達はしない」とよく私達に話していました。
 
そしてここではGordon自身が上記のような状況のもとでレッスンを受けたことによって、それまで自在に吹けていたことが全く吹けなくなってしまい、クラークにつくまでの10年近くの間、楽器が機能しなくなって苦しんだ、と自らの経験を語っています。
 
実は私も同じような経験をしました。今から考えても中学校の頃の私は相当吹けていて評判が立ったほどでした。高校に入って音大を目指した私は〇響のトランペット奏者に師事し、1週間に1回のレッスンにせっせと通いました。
教則本はアーバンだけ! 
私は学校をサボってまでも先生の言う通りに一生懸命やりましたが、どんどん吹けなくなってしまい、それについて質問しても「あなたは練習が足りない」「言った通りにやっていない」と言われる始末で、高3になった時は中3の頃よりも全然吹けなくなっていました。当然音大を諦めざるをえなく普通大学に進学しました。このことがGordonに師事するまで大きなトラウマになって、何をやるにも自信が持てなくなっていました。
最初のGordonのレッスンでこのレッスン内容を話したら、あきれ顔で「その先生に金を返してもらえ!」と言われました。この言葉を聞いて私はやっとそのトラウマから開放されたのでした。
 
ただ一般的に先生方は誠実で人格的にも立派で、本当に生徒を上手くさせようと、しっかりレッスンしています。しかし問題はその内容・・・・・
 
2005年12月10日
 
 
 

考察5<間違った情報は混乱を引き起こすp22〜p25>その1

 
今回はp22 後半に書かれている唇について触れてみます。
私のすべての教則本には「Lip Forget」と判が押されています。もちろんゴードンが押したのですが、それくらい唇に関して「その役目はただバイブレートするのみ、演奏中は唇のことを忘れろ!」とレッスンの度にかなり厳しく言われ続けました。裏を返せば、生徒達が唇を過度に気にしてしまう傾向があるのでこのように強く言い続けたのだと思います。
ゴードンのクリニックのビデオを見た事のある人はご存知だと思いますが、彼は唇の端から端までマウスピースをあてて吹き、最後には振動体が2枚あればいいのだ、と上唇と舌で吹いてデモンストレーションをしています。
また厚い唇、薄い唇にも触れていますが、これも関係ないと言い切っています。しかし巷では厚い唇はハイノートが出にくく、薄い唇はハイノートが出やすいだとか、子供たちが金管楽器を手にする最初の入り口である吹奏楽などにおいてもディレクターの判断によって唇が厚いとチューバ、薄いとトランペットに回されてしまうということが実際に言われ、行われているようです。これは最低最悪の習慣です。これらは演奏するにあたって唇の役割をほとんど理解していなく、唇その物が色々なことをしていると言う誤った考え方に起因しています。ゴードンのところでは、唇が奇形の部類にある人達もきちんとトランペットを演奏していました。
 
さてここからが大切なポイントです。
ゴードンは表面上全く唇に無関心という感じですが、ただ2点、とてもこだわっている事があります。
 

  1. 唇はウェットに
  2. マウスピースの位置は上2/3、下1/3(すべての金管楽 器に適応)

 
1.に関してはウェットにすることによって唇の保護。唇が自然にリムをグリップする感じが掴める事。
 
2.に関しては唇はダブルリードとたとえられますが、実際は上唇の方が良く振動しているので、マウスピースが下に設定されるとリムによって著しく振動を妨げられる傾向にあり、上に設定すると豊かなバイブレーションが得られる。
 
ゴードンは生徒のアンブシュアがよくない場合は徹底的に直していました。ゴードンのアンブシュアチェンジの方法は、まず1ケ月間楽器に触れさせません。
これは今までのアンブシュアを忘れさせるためです。そして、上2/3、下1/3にセットさせてフィジカルアプローチのレッスン2から練習させます。アンブシュアチェンジをしたほとんどの生徒は、その正しいアンブシュアで素晴らしい恩恵を受けました。
例えば、この本の中で呼吸についての考察をしている心臓外科医のDr.Larry Millerですが、初めて彼に会った時はひどいアンブシュアで、演奏も小学生並みのひどいものでした。その後アンブシュアチェンジをして1年ほど経っ て会った時には見違えるほど良いプレイヤーになっており、週末はビッグバンドのギグをするほどの変わり様でした。
 
2005年12月25日 
 
 
 

考察5その2<間違った情報は混乱を引き起こす>p24~

 
 
今回はp24に書かれているマウスピースでのバズィングについてです。 
ここではあっさり通過している感じがありますが、実際のレクチャーではかなり強い、怒りに近い調子でバズィングでの練習を攻撃していました。 唇だけのバズィング、マウスピースを使用してのバズィングは効果がなく悪い癖さえ付いてしまう弊害があるということです。
 

何故バズィングをするのか。 
唇だけでその音程を出せれば楽器でもその音が出るというような錯覚で練習していると思うが、実際バズが始まるには楽器本体の抵抗が不可欠。仮に不用意に演奏中マウスピースが唇からはずれた場合、その音程をバズィングで保っているなんて事は絶対にあり得ないし、もしそういうことが出来るというデモンストレーターがいたら、何らかの作業をしているはずだ! あまり長い時間をバズィングに費やすと、実際に演奏に使う以外の筋肉が鍛えられてバランスが悪く発達してしまい、耐久力、サウンド、豊かなハイノートに著しく悪い影響が出る。バズィングで練習するヒマがあったら楽器を練習しろ!! 

というのがゴードンの口癖だったので、もしゴードンの前でバズィングでもしようものならパンチが飛んできそうな気さえしました。 私の指導経験から言っても、やはりバズの弊害というのはあると思います。唇を鍛えるという発想だと思いますが、ゴードンの言う「唇は振動するのみで、仮に唇でグランドピアノを持ち上げられるほどのマッチョリップになったとしても楽器は吹けないよ」が全てを言い当てていると思います。 しかし吹奏楽コンクールの会場などに行くとあっちからもこっちからも、熊ん蜂の集団か! というくらいビービービービー反響しているのが現状だ。
 
2006年1月22日
 
 
 

考察6 第2部<正しい演奏をするために>p27~p29

 
ここから演奏に関わる具体的な考察に入って行きます。 
ここではゴードンが最初に受けたクラークのレッスンについて書かれていますが、翻訳にあたって戸惑った箇所がありました。原文は、He(Clarke) hit me so hard that I fell over backwards. となっています。殴られたなんて、なんて凄いレッスンだったんだと思い、しかしあり得ないと思ったのでゴードンに確認したところ、殴られた(hit)のではなく胸で押されたということでした。こういうところが翻訳の難しさ、落とし穴なんだなと思った次第です。
 
ここでは次に掲げる7つの要素について触れています。 
 

  1. 息の力(ウインド・パワー) 
  2. 舌 
  3. 呼吸のコントロール 
  4. 唇 
  5. 唇と顔の筋肉 
  6. 右手の指 
  7. 左手

これらをバランス良く練習する事が必要だと述べていますが、これに関して私はとても苦い経験があります。 
ゴードンに師事する前、私はハイノートを出したいという強い願望がありましたが、実際はハイCがやっとのような状態でした。そこで私がした事はSystematic Approachを数時間練習するという事でした。今はどうか分かりませんが、その当時はシラブルを言えばハイノートが簡単に出るなどということが言われていたので、ローノートは「Ah」、ハイノートは「Eee, または Hee」と意識して取り組んでいました。 もちろん全く効果は得られず悶々とした毎日を送っていました。 
 
私のアプローチは正しかったのですが、ゴードンに師事してから分かったのは、舌が良い形のシラブルを形成するための訓練が足りなかったという事、そしてその良いシラブルを作る舌を訓練させるために、ハイノートにはおよそ結びつかないと思われるクラーク、セイントジャコム、シュロスバーグ、アイアンなどの舌を成長させるエクササイズが必要だったという事です。 苦手意識のあったハイノートを克服出来たのは、この7つの要素をバランスよく訓練することの大事さを痛感して練習した結果だと思っています。 しかし当初はこのバランスが理解出来ていなくて、MFのようになりたいのに、何故クラッシックプレーヤーのような訓練ばかりさせるのか、とグチってばかりでしたが。
 
ゴードンが考えるこの7つの要素はそれぞれリンクしており、バランス良くそれぞれを成長して行くために彼は教則本を書き、伝統的な教本も用いた各々に合ったカリキュラムを考えた訳です。 
今後教則本の活用方法も含めて、それぞれの要素を1つずつ掘り下げて行こうと思っています。
 
2006年2月4日
 
 
 
 

考察7 <ウインドパワー> p29~P43
 

p32~p35には医学博士ラリー・ミラーが行った、ゴードンを含むプロのTpプレーヤーが演奏の際にどのような体の動きをしているか、というX線透視を使っての実験をした論文が書かれています。 可能なかぎり直訳をしたので読みにくいかも知れませんが、まず是非ここをじっくり読んでみてください。 
これは呼吸はこのようにあるべきだとか、こうするべきだ、このようになるはずだ、というようなことではなく、実際にトランペットプレーヤーに楽器を吹かせたらこうなったという、X線透視実験を行った医者の立場で書いたものです。 呼吸法に関しては諸々の意見、考えがあり、沢山の理論があることは承知していますが、実際に私のウインドパワーが発達したルーティーンを皆さんに紹介したいと思います。
 
使用する教則本は何冊かありますが、まず最初に使用するものは カールフィッシャー出版のゴードンの"SYSTEMATIC APPROACH TO DAILY PRACTICE FOR TRUMPET"(05017)ト音記号用、"SYSTEMATIC APPROACH TO DAILY PRACTICE"(04959)ヘ音記号用です。 
これらの各レッスンはいくつかのパートに別れていますが、レッスン2から始めパート1とパート2だけを使用します。ウインドパワーに限っていえばパート1がその箇所にあたります。
 
練習するときに気を付けることは、
 

  • まず立って、良い姿勢で緊張しすぎない程度のチェストアップをします。
  • 次にビッグブレス、そして乱暴にならない程度の十分に響く音でスタートしてください。
  • 最後の音はクレッシェンドしながら息が無くなるまで吹き続けます。 
  • 息が無くなって全く音が出なくなった瞬間から3秒間、吹き続ける行為を持続させます。 

この時に大事なことはチェストアップしている姿勢を最後の最後まで保つことです。こうすることによって、肺の周りの筋肉がスキューズする感じが掴めると思います。人によっては背筋が痛く感じることもありますが、これはとてもいい傾向です。ここでチェストダウンをしてしまうと筋肉のスキューズが甘くなり、効果が半減してしまうため必ず最後までチェストアップし続けてください。
 
ウインドパワーをつけるにはH.L.クラークの時代からこのルーティーンが効果的でH.L.クラークの生徒達も一生懸命やり続けたとゴードンから聞いています。私の生徒達にもとても良い影響、良い結果が出ています。
 
この教則本には50を越えるウインドパワーのルーティーンが書かれているので、1つのルーティーンに対して2週間から3週間費やして次に進みます。 これを続けることによってきっと素晴らしいウインドパワーが手に入ると思います。
 
2006年2月23日
 
 
 

考察8<ブリージングエクササイズ>p36~P37
 

今回は実際にゴードンのところで行われていたブリージングエクササイズについて書きたいと思います。(このサイト中のMy Story・Breathing Ex.をより簡潔にしました) これはゴードンがH.L.Clarkeから伝承されたもので、私自身効果が実感出来ました。皆さんも是非試してみて下さい。
 
このエクササイズには、静止状態でやるものと動きを伴う2種類があります。 
◆静止状態でのエクササイズ 
 

  1. まずリラックスをしたよい姿勢でチェストアップをする。肩を上げずに胸を張る状態(p36の図11を参照)
  2. 口から息を吸い、肺に空気が一杯満ちるようにする。(この時腹に入れる、とか背中に入れるなどのような非自然的な事は考えないように)
  3. チェストアップしたよい姿勢を保ち、息を口から吐ききる。 
  4. この時肺の周りの筋肉が締まる感じがすると思います。ただ始めはぎこちなく感じたり、うまく行かないと思いますが、構わずやり続けてください。徐々に体が自然によいポジションに移行して行くのが感じられると思います。 

上記を連続して10回でワンセットです。 
このセットを1日5回、計50回をプレーヤーであり続ける限りずっとやり続けます。
 
◆歩行を伴うエクササイズ 

  1. チェストアップの状態で5歩吸って、5歩息を止め、5歩で吐き、5歩息を止める。1日トータルで1マイル(1.6km)くらいが理想です。 これを1ケ月やります。1歩で一気に吸ったり吐いたりするのではなく、5歩に分けて吸い、吐く。 
  2.  2ケ月目は6歩、3ケ月目は7歩…と増やして行き、6ケ月かけて10歩まで進ませ、これもまたプレーヤーであり続ける限り10歩のエクササイズをやり続けます。
  3. ここまで来て、まだ余裕があり次の段階に行けそうな人は歩行をジョギングに変えて5歩から再スタートします。

2006年4月6日
 
 
 

考察9<医学博士 Larry Millerによる呼吸の実験>p32~p35

始めてLarryに会ったのは1980年夏に行われたゴードンのワークショップでしたが、記憶に残っているのは彼が当時アンブシュアに問題を抱えていたため、すがるような眼差しでゴードンに食らいついていた姿です。ほとんどのゴードンの生徒達はおおらかでポジティブだったので彼の悲壮感漂うネガティブな様子は印象深いものがありました。 
帰国後、ある日彼から突然連絡があり、医者であるため練習時間が少ないので持ち運びができるTpを探しているが、日本にポケットカンタービレという小型 のTpがあるはずだから購入して送ってくれないか、とのことでした。私は関西の本社に連絡を取りすぐさま送りました。ゴードンモデルTpとは抵抗が違うため心配したのですが、ラリースーザにリードパイ プをゴードンTpと同じ吹奏感になるよう交換してもらい、どこに行くにも持ち歩き練習していたようです。 
彼に一年後に会った時には見違えるほどのプレーヤーになっていて他人事ながらすごく嬉しかったことを覚えています。 
医療機関を貸し切り状態で使用するという行為は想像がつかないほど大変だったと思いますが、彼のやり遂げるという姿勢がこの実験にも反映されていると思います。
 
ここでは楽器演奏において実際にエアーがどこに入って、どこの筋肉がどのように動き、収縮されているか、横隔膜がどのように動いたかを医学的な立場から検証し、結果に基づいた事実を述べています。 
文章は少し堅苦しく読みづらいかもしれませんが、是非読んで理解してもらえればと思います。
 
私はラリーミラーに会うまで、呼吸についてかなり混乱していましたが、彼のレクチャーを受けてからは呼吸について非常にクリアになり、自分のやっている事に自信も持てるようになりました。実際にその時実験に使った映像や資料はワークショップですべて開示されました。その実験に参加した人達はゴードンを含めてリードTp、ジャズプレーヤー、シンフォニープレーヤーなどすべてプロのTpプレーヤー達でした。それぞれのジャンルは違いましたが、ペダル~ダブルハイCまでいろいろなパターンで演奏した結果、上記に述べたようにエアーがどこに入って、どこの筋肉がどのように動き、収縮されているか、横隔膜がどのように動いたかの実験データは皆同じものでした。 
私はその映像を見た事によって何故ブリージングエクササイズが必要か、そのエクササイズによってどこの筋肉を鍛えるべきかが明確に分かり、今の今まで呼吸に関する不安や迷いはなく演奏活動が続けられています。 
あの膨大且つ貴重な資料はいつかLarry Millerから借りて日本で公開してみようとも考えています。
 
2006年4月13日
 
 
 

考察10<ペダル音域>p39~p43

 
st.jacome.jpg 
 
この楽譜は1860年に書かれたセイント・ジャコムのp81ですが、ここに書かれたものがペダルについての最古の記述と思われます。 ここには「普通にコルネットを吹くように、口を動かしたりせずに、そのままの状態で捕らえなければならない」と英文で書いてあります。 この文章はわかりにくいと思いますが、実はペダルの全てを言い当てています。


 
私は1979年のゴードンのブラスキャンプでボウミール・クリルの「ベニスの謝肉祭」の録音テープを聞きましたが、この中で彼が吹いているペダルノーツにはたまげました。と同時に本物のペダルサウンドが理解できました。 
ペダル音域は普通曲中ではほとんど演奏されません。 
ゴードンのところではペダルの練習には2つの目的がありました。 

  • 1つは演奏後の唇のマッサージ(ウォームダウン) システマティックアプローチのレッスン3のパート3がそれに当てはまります。 
  • もう1つはハイノートを拡大するための訓練として使用する。

 
<ハイノートを拡大するためになぜペダル練習なのか? >
私は当時どうにもここが理解できませんでした。 
というのも当時私のペダルというのは唇を緩めてズズズーブリブリ・・とバズをして出すというオナラみたいなものでしたから。 
この方法だとローノートは唇を緩め、当然ハイノートは唇を締めて出すという最悪の奏法をしていました。
 
正しいペダルは簡単に言うと中音域を吹く時のような唇の状態で口の中を大きくしてエアーをコントロールして出します。
このやり方だとバズのような音ではなくファットなサウンドになります。 
このフィーリングが身に付き始めると、ハイノートもこれと同じように唇のテンションが変わらずに口の中を狭くすることとエアーのコントロールでファットなサウンドで無理なくハイノートが出るようになります。
 
ペダルの訓練としてはシステマティックアプローチのすべてのレッスンのパート1がそれにあたります。
 

ペダルの練習は正しく行えばとても有益な練習、しかし正しく行わなければ全く無意味で効果がなく、害にさえなる

とゴードンは常に言っていました。 皆さんどうぞ注意してペダル音域の練習をしてください。
 
2006年5月20日
 
 

兄弟子Carl Leachのペダル考察

 
Carl.jpgカール・リーチによるショービジネスの講義@CGキャンプ 
ゴードンの直弟子の一人Carl Leach(Stan Kenton Orchestra, SFのBay Areaで活躍した後ラスベガスのFlamingo Hilton Showroom Orchestraで10年ほどリードtpを勤めた)とは当時一番親しくしており、彼のラスベガスの自宅に居候していた事もあって大変世話になりました。彼が自身の著書「Street-WiseTrumpet Playing」の中でペダルについて語っている箇所があるので参考になればと思い和訳してみました。 実際私も彼からペダルについて適切なアドバイスを沢山もらいました。


 

  • 古えのマスター達はペダルを吹いていました。それについては古い本の中にあるエクササイズ、ジュールス・レビィ(絶版)やセイント・ジャコムのp81(ペダルの練習方法などはきちんと書かれていません)などから知る事が出来ますが、それらの多くはマスターから弟子へと口頭で伝えられ、教則本に記述されるということはほとんどありませんでした。演奏において効果の得られるペダルの練習方法はたった1つであるのに対して、よく言われるfffで吹く、間違った指使い、あごを落とさないなどのペダルのアプローチなどは百害あって一利なしです。これらのアプローチがペダル練習の評判を落としたり、使われなくなったとしても少しも不思議ではありません。 ペダルの練習方法についてよく理解したければゴードンの"Systematic Approach"を読む事です。
  • 私がここで言おうとしている事はペダルの練習から得られる恩恵です。 ペダル音域ではエアーのスピードが必要なため、胸の筋肉を鍛えるよいエクササイズとなります。 
  • 唇が固くなった時はリフレッシュを得られ、アンブシュアに問題を抱えている人達は正しいアンブシュアが得られます。 
  • この時にはあごは下に下がりタングが"aw"のポジションになっています。そしてあごを自由に動かせるようにしなければいけません。それによってアンブシュアが楽器をフレキシブルに捉えます。
  • あごを突き出すとか、あごを固くするように教えているメソードは演奏者の能力を制限してしまいます。もしあなたがこの範疇にあるなら、ペダルの練習は1日の練習の最後にします。そうする事によって次の日に望ましい形でスタートして行けるでしょう。

 
2006年7月11日
 
 

考察11【舌】p43~p53
 
 
 
 
 

この項目はこの本の中で最重要なパートなので、翻訳するのにも気を遣い時間もかかりました。 ゴードンがいつもレッスンで語っていたことが、これ以上付け足すこともないくらいに簡潔にまとめられているので熟読して下さい。 
何度も読むことによってきっと素晴らしいヒントが得られるはずです。
ここでは実際にゴードンの生徒達が「舌」の訓練のために一番使用していた教則本「27 Groups of Excercises for Cornet and Trumpet」 by Earl D.Irons (Southern Music Co.) <以下アイアン>のゴードンによる使用方法を記載しようと思います。
 
まずp7のGroup7のみ使用します。以下の注意事項を参考にして下さい。 

  1. 記載されているようにスラーで 
  2. リピートは4回くらい 
  3. 息がなくなったらどこでもよいのでブレスをする(息がない状態で続けない) 
  4. 速度は遅すぎない 
  5. 音量はmf〔小さすぎず大きすぎない〕 
  6. 最後の段はB〔2番〕からスタートしていますが、C(open)を付け足してCからスタートする 
  7. ヘ音記号用もあるので低音楽器はそれを使用する 
  8. フレンチホルンはBb管にしてトランペット読みで使用する 
  9. 練習中は常に舌の動きを観察しながら注意深く練習する

以上を2週間~3週間続けます。
 
2006年9月12日
 
 
 

考察12 <ウインド・コントロール> p53~p55

金管演奏の原理、ウインドコントロールの項の初めに次のように書かれています。
 
 「あなたが楽に演奏したいと臨むなら、 
  ウインド・パワーをコントロールすることが 
  基本的なこととして、絶対に必要なことなのである。」
 
ウインド・コントロールについて世間ではあまり語られていませんが、楽器を楽に演奏するにはウインドコントロールの上達が不可欠、且つ最も重要だと言っていいと思います。
 
technical studies.jpg 
Gordonのところではウインド・コントロール上達のためにハーバート. L. クラークの「Technical Studies」が使用されていました。
 
注意すべきことですが、この教則本を使用してのウインド・コントロールの練習に入る前に一通りいろいろなモデルで1st Study ~ 8th Studyを完全に終えておく必要があります。
 
ウインド・コントロールの練習に入った時に考えるべきことは、一言で言うと、 一息で吹くフレーズにおいてリピートの回数を増やして行くことです。 
1st Studyを例に取れば、初め3、4回しかリピート出来なかったものが何十回と出来るように なって行く(実際Gordonの生徒で52回という人がいました) そして1st Study ~ 9th Study において一息で何回もリピートが出来るようにる。
 
 

これこそクラーク~ゴードンへと伝わって来たウインド・コントロール上達法です。
 

Clarke&Claude.jpg 
 
 
 
 
 
 
2007年8月22日